購入申込受付時の取扱いで見抜く担当者の人となり
「同時期に複数の購入申込が入ったときって、先に申込を入れた人が優先になるんですか?」
この手の質問を、売り出し前の媒介交渉中に担当者さんに投げかけてみましょう。私が考える、担当者の模範解答は「いえ、売主さんにとってベストな買い手が後者なら、後者が優先されます」なんですが、逆を言えば、「そうなりますね」みたいに先着順を匂わせる担当者には、私だったら売却を依頼しません。
理由は単純に、自分(売主)のことを第一に考えてくれそうにないから。だって、先着順で受付なんて、両手仲介を狙いたい不動産会社、担当者のエゴに過ぎないんですよ。考えてもみてください。【CASE.1】①満額での購入申込だが契約は1ヶ月後、②許容できる範囲の若干の指値は入っているが条件合意すれば明日にでも契約可能。極端なシチュエーションですが、この場合、私なら迷わず②を選ぶんですが、先着順なら①が選ぶということ。①は一見、良いように見えますが、1ヶ月後に契約してくれる保証ってなにもないですよね。1ヶ月もあれば、心変わりもあります。家族や親族、友人・知人からの入れ知恵もあります。他に良い物件が売り出されるリスクもあります。そんなことを考えながら、悶々と1ヶ月待つくらいなら、私は②を選びます。
【CASE.2】①5,480万円で販売中の物件に5,200万円で申込発生(この時点では他のお客さんはいません)。担当者には、この話を前に進めたい意向は示したものの、指値が想定より大きいので、契約に至るまでは買い手の募集は継続してほしい旨を伝えていたところ、②満額での購入申込が発生。こうなるとどうでしょう。①も②も両手仲介になる状態なら、申込は先着順と言っていた担当者も②との契約を勧めると思いますが、①なら両手、②なら片手となるのなら、「①で話を進めるって言いましたよね?」、「そもそも私は申込受付は先着順になるって前に言ってましたよね?」みたいに、きっとあなたを詰めてくることでしょう。これって、売主であるあなたの物件のなのに、あなた本位の仲介ではないと思いませんか。(どう考えても、不動産会社、担当者本位の仲介だよね)
前述のCASE.2で、思うところは二つあります。一つは、仮に先着順だとしても、担当者がやるべきことは、先に申込を入れてくれた①の買い手さんに対して、②が現れたから満額(5,480万円)で購入できないか?と尋ねること。それが叶って、価格以外の条件も同じなら、売主さんも納得ですよね。二つ目は、そもそも論なんですが、このような状況に至ることはほとんどないんじゃないかってこと。①が現れたときに買い手募集継続の意向を担当者に伝えていますが、大抵の場合、その後に他社経由で内覧希望が発生したとしても、この担当者は「契約予定なので紹介不可」と回答すると思うので、他社経由で②が現れることがそもそも現実的じゃないってことです。
わざわざ現実的じゃない話まで持ち出して長々と書きましたが、要するに、冒頭の質問「同時期に複数の購入申込が入ったときって、先に申込を入れた人が優先になるんですか?」に対して、先着順と回答する担当者は、両手仲介を狙うための布石としてそう回答しているわけです。指値があっても、自社発生の買い手なら先着順を理由としてゴリ押し。もちろん、自社に都合の悪い状況に陥ったら先着順と伝えた売主に対し、論理を捻じ曲げたアプローチをしてくることは想像に難くないですよね。
不動産売却において、担当者選びは大変重要ですが、売り出し前に担当者の人となりを把握するのって困難。だからこそ、冒頭の質問を媒介契約前に担当者に振ってみて、ふるいにかけてみるのもいいかもしれませんね。
購入申込受理の基準を明確化しています
買い手が「買いたい!」となったとき、ほとんどの担当者さんは購入の意思表示を書面に落とし込みます。この書面を「不動産購入申込書」とか「買付証明書」とかっていうんですが、これって、売主さんに「私はこの条件であなたの不動産を買いたいです!」っていう意思表示なわけ。なのに、“この条件”の部分が全然埋まってない状態で提示してくる担当者がめちゃくちゃいて、本当に面倒くさいんです。だから、当社では、申込を受理する基準を制定し、公開しています。とはいえ、売主さんがその基準をみたら、「津田さん、これって当たり前の情報じゃないの?」と仰る方もたくさんいると思います。そうなんです、当たり前の情報なんですが、当たり前のことが当たり前にできない業界なんです…
たとえば、手付金の額。これは契約解除にかかる重要な事項。売買価格に見合わない少額手付の記載はけっこうあるんだけど、これはまだかわいい話で、記載なしで提示する担当者がいます。申込をなめてるのか、お客さんに代わってとりあえず自分が書いているのか知らんけど、こんなことがけっこうあります。ほかにも、指値を入れているのに契約希望日(契約できる日)を書いていなかったり、引渡し希望日が書かれていなかったり。あのー、これで売主さんになにを判断してほしいんですか?と尋ねたい、本当に。
両手取引の少ない私は、昔ほど自ら買付を取る機会は減りましたが、買付の記入は可能であれば対面でやっていたし、その対応時間も60分くらいはかけていました。なぜなら、この瞬間がもっとも、買い手さんと現実的なお話ができるタイミングだからです。指値を入れるのか?(住宅ローン利用なら)年収はいくらなのか?健康状態は問題ないか?…こんなことって、このタイミングじゃないと聞きづらくない?
でも、対面にこだわる一番の理由は、購入の意思表示に重みをもたせたいから。これにほかなりません。購入申込書に法的拘束力なんてないので、ともすれば簡単に意思表示をする買い手もいるはず。まだ検討中だけど、先に手を挙げていないと買えなくなるかもだから、とりあえず記入しておこう、みたいな申込を防ぎたい。
「書いてもらったこの書面を売主さんに差し入れます。この書面自体には法的拘束力はないんですけど、これを売主さんに差し入れた後にキャンセルされると、私は売主さんから信頼を失います。だから、軽い気持ちなら提示したくないんですが、記載してもらった諸条件が整えば、契約するということでいいですか?」
このセリフを顔を合わせて買い手さんに伝えたいので、対面にこだわっているんです。
当社は原則、両手仲介は行わないため、他社さんから購入申込書をいただくケースが増えました。そうなると、前述のセリフを自ら買い手さんに伝えることができないため、申込受理の基準を明確化し、売主さんに精度の高い申込を届けたいんです。もっと言えば、精度の低い申込書を売主さんに差し入れて契約直前でキャンセル… なんてことが発生して無駄に売主さんを悲しませたくないんですよね。
すべては、売主さん本位の仲介を実現するための施策。当社の判断基準はその一点に尽きます。